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[小説 時] [146 目途]

146 目途

 暖房も殆ど効かない程の冷えようだった。

 何人かの玄関を出て行く音が聞こえて来た。追いかけるように、又何人かが帰って行った。襖が開いて、仲居の一人が顔を出した。徳利を両手で捧げながら、もう少しお待ち下さいと言った。車が出払っているそうで、すぐには無理だと云うことでした、この雪で皆さん車をお使いでしたから、・・・。

 雪、・・・。そう、長い間この時を待っていた。だが、今でも具体的な目途がある訳ではない、只、雪の景色だけが、漠然とした期待に間違いなく応えてくれる、・・・そう考えていた。そして今、この屋根の下に、その二人だけが残っている、後は、自分が汗をかけば良い、・・・。

 どちらへ?
 いや、もう少し酒が欲しいと思いましてね。
 わざわざご足労戴かなくても、電話を入れて下されば済みましたのに、・・・。部屋でお待ち戴けますか、すぐにお持ちします。
 それだけじゃないんですよ。・・・どんな様子か知りたかったものですからね。
 まだ少し苦しそうですが、幹事さんが傍に付いていますから、ご安心下さい。
 覗いてみる訳にはいきませんか?
 すぐに参ります。どうぞお戻りになって下さい。
 だめですか、・・・。
 わたしが相手では不満ですか?
 ・・・分かりました。此処はあなたの言う通りにしましょう。
 ありがとうございます。

-Dec/20/1998-

・・・つづく・・・



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