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[小説 時] [79 道理]

79 道理

 此処ではっきりとした返事ができないようなら、・・・。
 申し訳ありませんが、できません。
 それなら話は簡単だ。
 いえ、・・・。
 何を考えているのか解らんよ。少なくとも、他人を説得しようとするからには、道理に叶った説明があって然る可きだろう。それが一度でもあったかね?
 その点はお詫びします。が、・・・何故それができなかったかと云う理由に就いては、察して戴けるだろうと思っていました。
 それとこれとは別の問題だ。
 やはり、ご存じでしたか。
 何のことだ?
 父は今度のことで、かなり参っています。勿論、口にはしませんが、・・・。母は、もう、疲れを感じることさえできません。それを、・・・それが何に由来するかと云うことを、お察し戴けないでしょうか?
 前にも言った通り、君の気持ちも解らない訳じゃないんだ。事実かどうかは知らんが、いろいろな風聞も耳に入っている。しかしだ、それが娘との話にどう結び付くんだね。一年も経てば、それなりに問題の整理はできる筈だ。それができれば、どちらを先に片付けなければならないかは、自ずから解ることだろう?
 仰る通りです。
 良いだろう。・・・話を聞こう。
 本来なら、もっと早くご返事をするべきでしたが、ご存じの通りの事情でそれができませんでした。何度も我儘を聞いて戴けたことに感謝しています。今度はわたしが約束を履行する番だと云うことも承知しています。・・・その上で、今日ご相談したかったのは、もう一度、機会を、・・・時間を、猶予を戴くことはできないだろうかと云うことでした。
 それは君の一方的な希望であって、こちらの事情はどうなるんだ?
 ・・・申し訳ありません。
 まず、その理由を説明しなさい。それが先だよ。何の説明もなしに待ってくれと言われても、それで他人は納得すると思うかね?

-Dec/18/1997-

・・・つづく・・・



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