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[小説 時] [67 虚勢]

67 虚勢

 お前を犯罪者にはしたくないんだ。
 ありがとう。・・・だが、待っているだけでは何も変わらない。
 方法は?
 まだ、・・・考えていない。
 頭で幾ら考えても、それだけで、できることじゃないんだよ。・・・もう少し、じっくりと考えた方が良い。まだ、時間はあるんだから、・・・。何なら、読まなかったことにしても良いんだ。
 それには及ばない。・・・頭の中では、全てが、もう、出来上がっている。
 そんな具体性のないことで、うまくいくとは思えないね。
 まだ、少しは時間がある。
 そうだな。良く考えて、それからでも遅くはない。
 そうするよ。
 もうそろそろ行くが、ちょっと寄って行かないか?
 いや、遠慮するよ。
 彼も出席するんだ。戦勝気分だよ、多分。・・・この際、じっくりと生態を見ておくのも悪くはないと思うがね。
 あいつのことなら、良く知ってる。
 今度のことで、相当、自重しようとするだろうな。
 酒の飲み方は、そんなに簡単に変えられるものじゃないよ。
 表向きはあんなふうでも、相当堪えてる筈だと思うがね。それが普通の感覚だ。
 素面の内はそうかも知れないが、一滴でも口に入れば、その先は同じだよ。・・・暫くすれば、正体不明。後は、宴会が一区切り着くのを待って、取り巻きと一緒に馴染みの店へ繰り出して馬鹿騒ぎだ。
 多分、今回もそんなところだうな。それにしても、幾ら親父の目が届かない店が良いとは云っても、どうしてあんなに店に執心なのか良く分からんよ。
 自分の立場に裏付けがない人間は、何時だって優越感を満たしてくれるものを選ぶよ。結局、自分はその程度だと云うことに気付けないんだろう。
 普段は自信たっぷりなんだけどね。
 自分一人では何もできないから、逆に虚勢を張りたがるんだろうな。・・・今度の筋書きも、恐らく、親父が書いた。あの男に、あれ程の才能があるとは思えないからね。
 仮にそうだとしても、・・・この辺りじゃ、その手の話はしない方が良い。

-Nov/15/1997-

・・・つづく・・・



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