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[小説 時] [177 意図]

177 意図

 さて、次に、店での様子をお聞きしたいんですが、・・・あの店は初めてでしたか?
 店に入ったのは初めてです。
 そうですか。・・・大分酔っていたそうですね?
 かなりひどい状態でした。尤も、だから、あの店に寄ったんでしょうが、・・・。
 あなたはどうでしたか?
 勿論、酔ってはいましたが、彼程じゃなかったと思います。
 店の女に聞いた話では、何時もなら麦茶だけなんだそうですよ。ところが、どう云う訳か、酒を飲んだ。そうですね?・・・あの店で酒を飲むことは、滅多にないそうです。
 どう云う主旨の質問なのか、良く理解できませんが、・・・。
 幾らか酔いも醒めて、そこで初めて、隣に座っていたのがあなただと云うことに気付いた。酒を飲み始めたのは、それからだと聞きましたが、・・・。
 そうでしたね。でも、それがどうかしましたか?
 どうしてなんでしょうね?・・・不思議だとは思いませんか?
 わたしが傍に付いていなかったら、酒を飲むようなことはなかった、飲まなければ、事故も起きなかった。・・・そう云う意味の質問ですか?
 大筋ではそう云うことです。
 今此処で、そう云う仮定の話をすることに、どう云う意味があるんですか?

 一連の出来事は、結果を含めて、あなたの意図した通りに運んでいるように見えるんですよ。
 お互いに貴重な時間です。無駄な議論は止めましょう。
 そうでしょうか?・・・あなたは二次会の誘いを断わる一方、彼を残して他の出席者を先発させていますね。しかも、後から車で送ると云う約束をしたにも拘らず、あなたが送り届けたのは、あの店だった。・・・そこでは、あなたは、どうやら、招かれざる相手だったらしい。あなたにとってもそうだった筈です。・・・店を出る時も、折角の申し出を断って、歩いて帰ると言い出す。あの寒さにあの時刻ですよ。・・・それは、幹事さんとの約束があったからだと聞いていますが、本当にそれだけでしょうか?・・・とてもそうは思えません。つまり、あなたには意志があった。二人だけになれる機会を待っていた。そして、とうとう二人だけになることができた。・・・それが、あなたの筋書きです。違いますか?

-Jan/22/2000-

・・・つづく・・・



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