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[小説 時] [135 定刻]

135 定刻

 春に卒業したばかりの会員が二人、寒い廊下に待機していた。大学生らしい一人に名前を告げると、彼は出席者の名簿を覗き込みながら障子戸を開けた。出席者が一通り揃うまでには、例年なら、まだかなりの間がある筈だった。しかし、人数から考えれば幾らか狭いような気もする部屋を見渡してみれば、既に大半が自分の名札の置かれた席に収まっていた。

 珍しいな。まだ定刻前だ。
 これなら時間通りに始められそうです。
 こんなことは今までに一度もなかったことだ。何か、理由があるのか?
 さあ、見当も付きませんが、・・・。
 そうか。・・・しかし、冷えな。堪えるだろう?
 そうですね。少しでも早く始まってくれれば嬉しいんですが、・・・。
 廊下は寒いからな。・・・もうすぐだ。頑張ってくれよ。
 ありがとうございます。

 久し振りだね。
 そうだな。三年振りか。・・・去年はお前が欠席して、その前は俺だったからな。
 他のみんなはまだなのか?
 その内に着くだろう。
 今やっと定刻だと云うにの、どうしたんだ、これは?・・・揃っていないのは、うち位なもんじゃないか。
 俺達の年度は、何時も時間にだらしがなかったからな。時間通りに集まらないのは、今に始まったことじゃないさ。・・・終わった頃に顔を出して、平気な奴もいた程だから。
 その話は蒸し返すなよ。それにしても、何かあるのか?
 後で説明しよう。
 そうだろうな。そうでもなければ、場所を間違えたと勘違いしてもおかしくない。

-Aug/15/1998-

・・・つづく・・・



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