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[小説 時] [124 風景]

124 風景

 列車は、夜と朝の境を走り出した。外には何も見えなかった。・・・もうすぐ、明るくなるだろう、・・・その時、車窓の外にみえる風景は、もしかしたら、自分の予期していたものとは違うものかもしれない、・・・自分を乗せているこの列車は、間違いなく自分の目的地に向かっているのだろうか、・・・。いや、仮にそうだったとしても、もう、折り返すことはできない、・・・。

 陽が山の上に姿を現して間もなく、列車は駅に着いた。初めての朝を向かえた雪は、光を受けて眩しかった。数人の客を降ろして、列車はすぐに出て行った。後には、長旅の客の新しく積もった雪を踏む音だけが残った。

 僅かばかりの客の一人一人に、改札掛の駅員は「おめでとうございます」の挨拶を繰り返した。街は、雪に埋まっていた。その白い街に動くものはなかった。

 おめでとうございます。
 おめでとう。・・・今の列車か?
 ええ。随分遅れました。
 そうらしいな。まあ、上がれ。

-Apr/26/1998-

・・・つづく・・・



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